県人寮とは?地方出身学生の強い味方、その魅力と現状
大学進学で上京したとき、家賃の高さに本当にびっくりしたんだよね。
東京って、普通のワンルームでも7〜8万円とかするじゃない。
それはそうだよ。だから昔から「県人寮」を使う学生が多かったんだ。
出身県が東京に持っている寮で、月5万円以内で食事付きというところもあるんだよ。
え、そんなものがあるの!知らなかった。
県人寮とは何か?
県人寮(けんじんりょう)とは、各都道府県の出身者を対象にした学生寮のことです。「県民寮」と呼ばれることもあります。
主に首都圏の大学に進学する地方出身の学生が、安心して学業に専念できるよう、各都道府県やその育英会、関連財団などが設立・運営していることが多いです。また東京都内やその近郊に多く設置されています。
歴史は意外と古い
県人寮の成り立ちは、大きく2つの流れがあります。
ひとつは、江戸時代以降の藩の伝統を引き継いだもの。たとえば愛媛県の肱水舎(ひじすいしゃ)は、明治34年(1901年)に旧大洲藩主が創設した育英寮がその起源です。
もうひとつは、1955年(昭和30年)ごろに整備されたもの。当時の文部大臣が地方出身学生の住居問題を憂慮したことをきっかけに、全国各地で県人寮の整備が進みました。
現在、全国学生寮協議会に加盟する県人寮は41寮。かつては60寮近くありましたが、老朽化や定員不足などを理由に廃寮となるケースも増えています。
なぜ県人寮が必要なのか?
地方から首都圏の大学へ進学するには、大きな費用の壁があります。
平成30年の住宅・土地統計調査によると、首都圏の平均家賃は月81,001円。これに対して、全国52の県人寮の平均家賃は月32,250円(食費・光熱費等は別)です。単純に比較しても、住居費だけで年間約60万円近くの差が生まれます。
さらに一人暮らしが初めての学生にとっては、経済面だけでなく、精神的な不安も大きなハードルです。知り合いがいない土地で、生活のすべてを自分で管理しなければならない環境は、思いのほか負担になります。
県人寮は、こうした「お金の不安」と「孤立の不安」の両方を和らげる場所として、地方出身学生の進学を支えてきました。
県人寮での暮らし
県人寮では、どのような生活を送るのでしょうか。
費用の目安
寮によって異なりますが、寮費と食費(朝夕2食付き)を合わせて月額5万円以内というところも多くあります。
東京の一般的なワンルームマンションと比べると、約半額以下で生活できる計算になります。
同郷の仲間とのつながり
県人寮のユニークな点は、同じ都道府県の出身者が集まるという環境です。
同じ大学の先輩がいれば、大学生活の具体的なアドバイスをもらえます。異なる大学に通う学生との横断的な交流も生まれやすく、視野が広がります。
また、同郷という共通点があることで、初対面でも話しかけやすく、孤立しにくいという声も多く聞かれます。
地元とのつながりも続く
寮によっては、地元企業の会社説明会や、県にまつわるイベントへの参加機会が設けられています。寮生を代表して県知事との意見交換会に出席するといった事例もあります。
上京していても、出身地とのつながりを保ちやすいのは、県人寮ならではの特徴です。
今、県人寮が注目される背景
近年、物価高や奨学金問題が社会的に注目されるなかで、「安心して学べる低コストの住まい」として県人寮が再評価される場面が増えています。
一方で、新たな問題も表面化しています。NPO法人 #YourChoiceProjectが2024年に実施した実態調査によると、首都圏に設置されている52の県人寮のうち約6割が男子学生専用です。35自治体のうちおよそ半数が、女子学生向けの寮を設置していません。
男子学生2,627名に対し、女子学生の受け入れ数は689名。1都3県の大学に進学する学生のうち女子学生の割合がおよそ4割に近づいている現状と、大きなギャップが生まれています。
こうした男女格差の問題は、「女子学生も安心して地方から進学できる環境づくり」という観点から、社会的に注目されるようになっています。
県人寮のメリット
県人寮を利用することで得られる主なメリットをまとめます。
経済的なメリット
・首都圏の一般賃貸に比べて家賃が大幅に安い
・食事付きの寮が多く、食費の管理が楽になる
・光熱費や通信費が含まれるケースもある
生活面のメリット
・同郷の先輩・仲間がいるため孤立しにくい
・初めての一人暮らしでも相談できる環境がある
・食事が提供されるため、栄養面での偏りを防ぎやすい
人的なメリット
・異なる大学・学部の学生と交流できる
・多様なバックグラウンドを持つ人との対話が視野を広げる
・地元企業との接点がでる、UIJターン就職を考えるきっかけになる
全国の主な県人寮の事例
各都道府県が運営する県人寮のなかから、特徴的な事例をご紹介します。
上毛学舎(群馬県・東京都世田谷区)
群馬県が運営する学生寮。老朽化した建物の建て替えにあたって、敷地の一部を民間に貸与することで建設費を捻出するという方式を採用しました。県の財政負担を抑えながら建て替えに成功した事例として注目されています。
東京土佐寮(高知県・東京都三鷹市)
高知県が運営する歴史ある寮。「土佐」の名のとおり、高知県出身者の学生生活を長年にわたって支えてきました。
肱水舎(愛媛県・東京)
明治34年創設という長い歴史を持つ愛媛県の寮。かつて定員割れが続いたことを受け、従来の「愛媛県出身者限定」という方針を転換。全国からの応募を受け付け、中国・韓国からの留学生も受け入れた結果、満室率が90%まで回復しました。時代に合わせた柔軟な変化の好例です。
養徳学舎(奈良県・東京)
奈良県の寮。こちらも敷地の一部を民間に貸与することで建て替え費用を賄い、県の負担を抑えた建て替えを実現しました。
福岡県学生会館(福岡県・横浜市青葉区)
福岡県が横浜市に設置する広域型の大型寮。首都圏でも神奈川に設置されているのが特徴的です。
課題と変化の兆し
県人寮を取り巻く環境は、変化の途上にあります。
老朽化と廃寮問題
1950年代に整備された寮の多くは、建物の老朽化が進んでいます。建て替えには多額の費用がかかることから、廃寮を選択するケースも出てきています。静岡県の富士寮(東京都文京区)と長野県の千曲寮(東京都三鷹市)は、いずれも2025年3月に廃寮となりました。
女子学生受け入れの拡大へ
男女格差の課題に対しては、建て替えを行わずに工夫で対応している事例もあります。山形県の県人寮では、浴室の利用時間を男女で分けることで、大規模な改修なしに男女共用化を実現しました。
また、東京大学は地方出身の女子学生に対して月3万円の家賃補助を行う制度を導入しています。新たに寮を建てるよりもはるかに低コストで支援できる手段として、新しいアプローチとして注目されています。
全国募集・留学生受け入れへの転換
出身地限定という従来の枠にとどまらず、全国から学生を募集したり、留学生を受け入れたりする寮も増えています。入居者を確保しながら、多様な交流の場としての価値を高めようとする動きです。
まとめ:地方から東京へ進学を考えている方へ
県人寮は、地方出身の学生が首都圏で安心して学ぶための、歴史ある仕組みです。一般的な賃貸と比べて大幅に安い費用、食事付きの生活環境、同郷の仲間とのつながりは、初めての一人暮らしに大きな安心をもたらしてくれます。
一方で、老朽化・廃寮・女子学生の受け入れ格差といった課題も現実としてあります。全国の自治体が試行錯誤しながら変化に対応しようとしているところです。
地方から進学を考えている方は、まず自分の出身県に県人寮があるかどうかを調べてみることをおすすめします。全国学生寮協議会のウェブサイトから寮の一覧を確認できます。
県人寮って、今の時代にも十分使えるね。もっと早く知りたかった。
そうだね。ただ寮によって条件や空き状況がかなり違うから、早めに調べて問い合わせておくのが大事だよ。
わかりました。進学を考えている弟に教えてあげようっと!

