宗教法人の「不活動」問題とは?税優遇を悪用した脱税・資金洗浄のリスク
ねえ、ニュースで「宗教法人が売買されている」って見たんだけど、どういうこと?
お寺とか神社って売り買いできるの?
普通はできないはずなんだけどね。
でも実際には「抜け道」を使って、実質的に売買されているケースがあるんだよ。しかも、脱税やマネーロンダリングに悪用されることもあるらしい。
え、怖い…。そもそも宗教法人って何なの?
じゃあ、基本から説明していこうか。
そもそも「宗教法人」とは?
お寺、神社、教会、モスクなど、宗教活動を行う団体が「法人」として国に認められたものを宗教法人といいます。
「法人」とは、簡単にいえば団体が一人の人間のように契約を結んだり、財産を持ったりできる仕組みのことです。会社も「株式会社」という法人ですよね。それと同じように、宗教団体も法人になることで、土地や建物を所有したり、銀行口座を開設したりできるようになります。
現在、全国には約18万の宗教法人が存在するとされています。
宗教法人は簡単に作れない
宗教法人を新しく設立するのは、実はかなり大変です。
・礼拝施設(本堂や教会など)を持っていること
・布教活動を継続して行っていること
・信者を教え導く活動をしていること
・3年程度の活動実績があること
これらの条件を満たし、都道府県や文化庁の審査を通過して初めて認められます。審査にも数年かかることがあり、「今日申請して、明日作れる」というものではありません。
宗教法人はなぜ税金が安くなるのか
宗教法人には税金の優遇措置があります。これは「宗教活動は社会のためになる公益活動である」という考え方に基づいています。
非課税になるもの
・法要、葬儀、祈祷などの宗教儀式で得た収入
・お布施、玉串料、初穂料などの献金
・墓地の永代使用料
これらは「宗教活動そのもの」であり、営利目的ではないと判断されるため、税金がかかりません。
課税されるもの
一方で、宗教と直接関係のないビジネス的な活動には税金がかかります。
・駐車場の有料貸し出し
・不動産の賃貸
・物品の販売(お守りなども、販売形態によっては課税対象になることがある)
・結婚式場の運営や披露宴の飲食提供
ただし、こうした収益事業にかかる税率は、一般企業よりも低く設定されています。
「宗教法人=すべて非課税」ではないという点は、よく誤解されるポイントです。
問題になっている「不活動宗教法人」とは
ここで問題になっているのが、実際には活動していない「休眠状態」の宗教法人です。
文化庁によると、活動実態が確認できない宗教法人は約5,000法人にのぼるとされています(2024年末時点)。年々増加傾向にあるとの報告もあります。
「単立宗教法人」とは
宗教法人には、大きく分けて2つのタイプがあります。
・包括宗教法人に属する法人:「○○宗」「○○派」など、特定の宗派に所属している
・単立宗教法人:どの宗派にも属さず、独立して活動している
単立宗教法人は、宗派からの監視や承認が不要なため、代表者の交代や資産の処分が比較的自由にできるとされています。そのため、不正利用のリスクが高いとの指摘があります。
活動実態のない単立宗教法人は500以上あるとも報じられています。
宗教法人はどうやって「売買」されるのか
株式会社の場合、株を買えば会社の所有権を手に入れられます。しかし、宗教法人には「株」という概念がありません。
では、どうやって実質的な「売買」が行われるのでしょうか。
「寄附」と「役員交代」を使った方法
報道によると、以下のような流れで支配権が移るとされています。
1. 買いたい人が宗教法人に「寄附金」を渡す
形式上は「寄附」なので、法律上の売買契約ではありません。
2. 寄附金から、今の代表者に「退職金」が支払われる
代表者は退職金を受け取り、法人を去る準備をします。
3. 今の代表者が辞任し、買いたい人が新しい代表者に就任する
これで実質的に法人の支配権が移ります。
書類上は「寄附」と「役員交代」という正規の手続きに見えるため、違法とは言い切れない「グレーゾーン」になっているのが現状です。文化庁はこれを「売買に類似した取引」と表現しています。
ネット上に仲介サイトも
報道によると、宗教法人の売買を仲介するウェブサイトが存在し、約130件の案件が公開されているとされています。「格安」「節税に最適」といった宣伝文句が並んでいるとの指摘もあります。
ある仲介業者は取材に対し、購入希望者の目的として「節税」「マネーロンダリング」「納骨堂の経営」の3つを挙げたと報じられています。
なぜ悪用されるのか?具体的な手口
宗教法人が悪用される背景には、税制優遇の仕組みがあります。
悪用のポイント
・宗教活動による収入は非課税
・年間8,000万円以内の「お布施」などは、収支計算書の作成が不要
この仕組みを悪用し、本来は宗教と関係のない収入を「お布施」や「寄附金」として処理すれば、税金を逃れることができてしまいます。
実際に逮捕された事例
過去には、以下のような事件で逮捕者が出ています。
【名古屋の不動産会社のケース】
不動産の転売で得た利益約4億円を宗教法人を経由して動かし、約1億円の税金を逃れたとして、社長らが逮捕されました。
【福岡の企画会社のケース】
セミナーの受講料を「寄附金」として宗教法人の口座に振り込ませ、約27億円の所得を隠し、約8億円を脱税したとされています。
このように、宗教法人を「トンネル」のように使い、お金の流れを偽装する手口が問題になっています。
国際機関からの指摘と今後の動き
この問題は、日本国内だけでなく国際的にも注目されています。
FATF(金融活動作業部会)からの警告
マネーロンダリング対策を担う国際組織FATFは、2021年8月に日本に対する審査報告書を公表しました。
その中で、宗教法人を含む日本の非営利団体について「テロ資金供与に巻き込まれる可能性がある」と指摘しています。
日本は「リスクのある非営利団体への理解が十分ではない」とも評価されており、対策の強化が求められています。
文化庁の対応
こうした状況を受け、2026年2月、文化庁は不活動宗教法人の不正利用について実態調査に乗り出すことを明らかにしました。調査結果をもとに、不正利用を防ぐためのガイドラインを策定する方針です。
また、2028年にはFATFによる次の審査(第5次対日相互審査)が予定されており、それまでに対策を進める必要があるとされています。
まとめ
宗教法人の税優遇は、本来は公益性の高い宗教活動を支えるための制度です。しかし、活動実態のない「不活動宗教法人」が第三者に渡り、脱税やマネーロンダリングに悪用されるケースが問題になっています。
もちろん、悪用しているのはごく一部であり、約18万ある宗教法人の大多数は正当な活動を行っています。
今後、文化庁による実態調査や国際審査への対応を通じて、どのような対策が取られるのか注目されます。
なるほど…。税金の優遇って本来は良い目的のためにあるのに、悪用する人がいるんだね。
そうだね。でも大事なのは、一部の悪用事例だけを見て「宗教法人は怪しい」と決めつけないこと。ほとんどの法人はきちんと活動しているからね。
制度の見直しがどうなるか、ニュースをチェックしてみるよ。
【参考サイト】
東京新聞:宗教法人を「売りたい、買いたい」…なぜ取り引きされるのか
外務省:テロ資金対策
財務省:FATF対日相互審査報告書

